フルパッシブ矯正

現在までに行われたセミナーでのQ&A一覧

器材の使用法、選択編

Q : サブスロットのサイズを教えて下さい。
.019×.019です。

Q :サブスロットに使用するワイヤーの種類やサイズは
スロット自体のサイズは19×19で、有効サイズは18×18です。レベリングの類いは18×18のセンタロイを使う事が多いです。A-retを行う際は18×18のSSを使用します。また、積極的にトルクの修正を行う際は17×17か18×18のTMA系ワイヤーを使用しております。

Q :平板ワイヤーの具体的使用法
例えばA-ret時の上顎前歯のトルクコントロールや、スペース保持のために使用します。

Q :シーガルボタンのエンドを丸めて、先にさらにボンディング剤を使用しているのですか
ワイヤーエンドの処理は、必要があればサークルを作って、レジンでとめています。GCのユニフィルローフロー、松風のビューティフルフローなどは光重合ですので短時間で硬化させることができ、レジン性状の使い勝手も良好です。

Q :メタルブラケットを発売する予定はありますか
すぐにでも製作したいところなのですが、検討中です。


Q : T21のキャップは再利用できますか
脱落の原因になりますので行わないようにして下さい。

Q :ユニテック、オームコ、トミーのエラスティック対応表はありませんか
LinkIcon対応表はこちらをご覧下さい。

Q :下顎のブラケットが咬耗しませんか
確かに少し咬耗しやすいのでメタルブラケットの製作も検討しています。

Q :ワイヤーシークエンスに決まりはありますか
特に決まりはありません。術者の従来通りのワイヤー選択で構わないと思いますが、結紮時代と同じにはならないのでそれぞれの擦り合わせが必要です。大まかなガイドラインはセミナーの内容通りです。

Q :結紮は全く行わないのですか
意図して行う場合もありますが、基本的に必要ありません

Q :犬歯遠心移動の時、パワーチェーンの交換時期の間隔はかわりますか
大きな変化はありません。職人的な工夫をしなくて済むように、パワーチェーンのバリエーションを増やしています。

Q :エラスティックはセンタロイ使用時にも用いるか
その辺りのテクニックに変化はあまりありません。

Q :サンキン010とトミーセンタロイ012はどちらがいいのですか?TPの012の場合、かなり痛むという患者さんがいます。
Dentsply Sankinの010はワイヤーの直径が細いので、TOMY製センタロイ012に比べて破折する可能性が高くなります。そういう意味ではセンタロイの方がイニシャルワイヤーとしてはいくらか安全かと思います。感覚的な物ですが、叢生がきつい場合にTPの012をイニシャルにするには少しコシがありすぎるかもしれません。TPでしたら010からスタートがいいかと思います。ただし、基本通り叢生の程度などで判断して下さい。

Q :グラスアイオノマー系の接着剤との親和性はどうですか
グラスアイオノマー系でのテストはしていませんが、TOMY社製のLight-Cureとは親和性がいいようです。ロッキーマウンテンからでているMCPボンドも強度は充分です。

Q :6番チューブでなくシャッタータイプはでませんか
製造検討中です。

Q :ブラケットにアンギュレーションのガイドはありますか
ブラケットベースの近心根端側と近心切端側の角の部分にマーキングをしてあります。

Q :サンキンブラケットも同じですが、スロット内の汚れが気になります。
サンキンブラケットの場合は、スロットの横から3ウェイシリンジのジェット水流でプラークは結構とれます。T21の場合もスロット内は同じ手法で通用します。しかし、T21のほうがサンキンブラケットに比べて、キャップで被覆している面積が多いので、同じ手法で落ちきらないプラークがあります。カバー直下はやはりキャップを外してプラークを除去する必要があると思います。

Q :使用されているボンディング剤とその理由を教えて下さい
ロッキーマウンテンが販売しているMCPボンドを使用しています。田村矯正では使い慣れているからというのと、舌側矯正等の関連から同商品を使用しています。他のボンディング剤としては、TOMY社製のLight-Cureを試しましたところ天然歯との接着は良好でした。

Q :上顎2番はロートルクもしくはハイトルクブラケットがあってもいいのでは
従来の方法を踏襲するとそういう方向になるのですが、トルクの問題に関してはサブスロット法や別のアプローチ法を考えています。

Q :舌側咬頭をみるのにファイバースコープを利用するのはどうか
いい案かと思いますので、お試しいただいた際には是非結果を教えていただきたいと思います。

Q : セミナーの写真にあった下顎大臼歯のパワーアームについて教えて下さい
17×25のSSワイヤーをベンディングしてオグジュアリースロットに入れています。下顎大臼歯を選択的にロスさせたいときに使用しています。結紮時代から使用してる方法で、フルパッシブ矯正特有のテクニックというわけではありません。

Q :ニッケルチタンワイヤーでヒートベンドを使用することはないのでしょうか
使用すれば便利な事もあるかと思いますが、基本的にベンディングではなくシステムで解決したいという方向性で考えているので使用した事はありません。

Q :前歯全体にトルクをかけたい時は
平板ワイヤーや、サブスロットを使用した方法でかけます。

Q :ポリアセタールの安全性はいかがですか
安全性試験をして薬事法が通っていますので問題はありません。この材質はワイヤーとの滑りが良く、着色が殆んどなく歯垢が着きにくいので使用してます。

Q :上顎のキャップタブのバリが、下顎の口唇にあたって気になるという患者さんがいます。バリの処理方法を教えて下さい。
丁寧にキャップを外せば大きなバリにはなりにくくなっています。もう一つの方法としてキャップの装着前にタブを一度折り曲げておくとバリにはなりにくいでしょう。それでもできてしまったバリは、ユーティリティープライヤーで少し押さえるか、シリコンミディー等で調整します。ただしその際、ブラケット本体部分を傷つけないように注意が必要です。

テクニック編

Q :角線のエッジの落とし方を具体的に教えて下さい。
最初にカーボランダムで角を落とし、次に茶色のシリコンポイント、最後に緑のシリコンポイントをかけています。あまり平面部分にはポイントを当てないようにしています。

Q :症例によってブラケットをかえる事はありますか
症例によってかえることはありません。そのような必要のないシステムを目標としています。

Q :ブラケットポジションについて、変わる事はありますか?
例えばシーガルボタンなどのDBS時には、イニシャルワイヤーが極端にたわまない位置につける必要があります。その辺の詳しい内容は実習セミナーで行います。ただし、現在の一般的理論値から大きくかけ離れたポジションになることはありません。

Q :バイトが深いケースの注意点は
結紮する部分を増やす、などです。それ以外の対処法は通常の治療法におけるディープバイトへのアプローチと変わりません。

Q :215×28を使用したらフルパッシブブラケットの意味がないのでは
同感です。今まではサブスロットなどのトルクを効かせるための商品がなかったので、やむを得ず使用していました。今後さらにアイディアの商品化がすすめば、フルサイズワイヤーの使用頻度はもっと減ると考えています。

Q :エンマスでのリトラクションは行いますか
今のところあまり試してはいませんが、結紮で行うときほどの治療期間の差はでないのではないかと考えています。

Q :各ワイヤーの使用目的はデーモンのように決まっているのですか
決まりはありません。

Q :歯列全体のトルクコントロールがアンコントロールになったり、不安定になったりしませんか
全くありません。セミナーでの症例の通り、かえって安定することが多くなっています。

Q :非抜歯で叢生が強い場合、前歯がフレアアウトしないのか
セミナーでお話している非抜歯が増えるというのは、フレアアウトするような症例を強引にレベリングして治療するという意味ではありません。また、抜歯をした場合でもレベリングに注意しないと歯に無駄な動きを強いてしまう場合がありますので充分な注意が必要です。確かに結紮時代の術者のアバウトな感覚は良くない結果を招きます。

Q :Anterior-Retruction時のワイヤーサイズ、パワーチェーンの種類を知りたい
特に決まったワイヤーサイズ等はありませんが、一つの例として。3Mユニテックから販売されている「17×25SSのスマートクリップハイブリッドアーチワイヤー」を使用しています。パワーチェーンはTOMY社のスーパーチェーンです。

Q :下顎67番が舌側傾斜してしまった場合の修正方法はありますか
特別な方法は今のところありません。従来通りの方法で行います。最初から下顎大臼歯が舌側に傾斜しないようにトルク等のスペックを考慮しています。

Q :左右のAnterior-Retructionに差が出た場合の対処法はありますか
特別な方法は今のところありません。従来通りの方法で行います。

Q :クリッピーとの厚み等の相性は
田村矯正でもある程度試験しましたが、小臼歯をクリッピーにすると厚み等に関しては移行性がいいようです。

Q :アンカーはパラタルバー主体ですか?上顎67レーシングはしますか?レベリング前にペンデュラムを使用する方法ですか
万能ではありませんが、少なくとも今までのパラタルバーよりも適応範囲は広がっているのではないかと考えています。今後は別として、今のところは上顎67のレーシングは行っていません。レベリング前にペンデュラムを使用する事はありますが、これも以前よりアンカーという意味では適応範囲は狭くなっていると思います。その分パラタルバーの守備範囲がひろがったという感じです。

Q : セミナーで見ましたが、2番と3番の間にループを入れた方がいいのですか
あのループはフルパッシブ矯正だからというわけではなく、従来のテクニックのひとつです。

Q :小臼歯咬頭嵌合が得られない場合、ある程度のところまでバーティカルなエラスティックを使用しますか
バーティカルエラスティックを否定しているわけではありませんので、従来通り必要があれば使用します。ただ、結紮の矯正と比較して小臼歯部の咬頭嵌合が得られやすいという傾向があるということです。

Q : パラタルバーやナンスのホールディングアーチが入っている間にニッケルチタンワイヤーを使用すると特異的な動きをしたりすることはありますか?ある場合は注意点等ありますか
フルパッシブ矯正に特異的な現象はありません。ただし、従来の注意点をシビアに捉える必要はあるかと思います。

Q :DBSはインダイレクトですかダイレクトですか
現在はダイレクトでDBSしていますが、キャップを使用したインダイレクトシステムを構築する予定です。実現化する時期は未定です。

Q :ループをアクチベートした場合、結紮した時と同じ歯の固定にならないのか
結紮していないので歯の固定にはなっていないと考えます。組織学的レベルの実験をしたわけではないので厳密なことは断定できませんが、ループを使用した場合も結紮した場合とは別の効果が得られていると思います。

Q :下顎をgrowthさせるエラスティックの種類と期間は
両方とも確定的な方程式はありません。ただしエラスティックの強さに関しては全般、結紮の矯正よりも2〜3サイズ弱い方が効果的かと思います。

Q :Anterior-Retructionをループで行う場合もローフォースなのでしょうか
セミナーでお見せしたループのA-retはテクニックは結紮時代から使用している方法で、ローフォースのテクニックではありません。田村矯正でも試行錯誤が今も続いているということです。

Q :エラスティックによるリアクションが少ないのであれば、早期から使用する事も多いのでしょうか
エラスティックの効果も出やすいので、特別早期からは使用しておりません。

Q :エラスティック使用時のワイヤーサイズは
決まりはありませんので、ユーザーの先生方の矯正治療における原理原則通りで結構だと思います。

Q : 装置除去の判断基準に変化はありましたか
結紮時代と比べて変化はありません。装置除去後にシートしてくる可能性があると考えられる場合でも、フィニッシュを甘くしていいとは考えていません。


診断、治療計画編

Q :治療期間はどれくらい短縮されますか
平均で約50%〜30%の短縮です。また、ケースによって短縮される期間が大きく違うのも特徴です。

Q : 患者さんの通院間隔は変わりましたか
歯が移動するスピードも早いので極端には延ばしませんが、明らかに安全だと思われる場合は6〜8週空けています。

Q :インプラントを使用するケースはありますか?
できたらインプラントを使用しなくてもアンカレッジが確保できるシステムにしたいと考えています。

Q :骨密度が高い場合の治療法
まだ明確な対処法を確立しているわけでわありませんが、治療全般のフォースを強めにする必要があるのではないかと考えています。それでも歯牙の移動に時間はかかるでしょう。

Q :Extケースの割合は変化しましたか
まだ変化の途中ですが、Extは減りつつあります

Q :抜歯の判断基準は
矯正治療のゴールは装置の能力とは別の、解剖学的条件や、機能的条件等の次元で設定されるべきなので、装置が変わったからといって抜歯の判断基準を変えて非抜歯治療の適応範囲を安易に広げるという方向性は危険であると考えています。フルパッシブ矯正のように装置のポテンシャルが高いと強引な非抜歯でもある程度治療できてしまうので、そうならないような注意が必要だと思います。また、2級症例なども従来であれば下顎は5番を抜いていたケースも下顎の4番で済む可能性が広がったりしますが、それも慎重にドクターの経験とすり合わせてべきだと思います。

Q :抜歯のタイミングをかえる必要はありますか
結紮時代よりもさらに細かい歯の動きを治療初期から厳密にマネージメントできたら、フルパッシブ矯正の利点がより生きてくると思います。抜歯のタイミングをかえるなども良い手だと思います。つまり義務的内容ではなく付加的工夫になるかと思います。

メカニズム編

Q :バーティカルロストモーションにより3次元的に歯が独立しているというコンセプトがMEAWと似ているように思えるが、MEAWワイヤーをフルパッシブ矯正ブラケットに使用した事はありますか
今のところありません。お試しいただいた際には是非結果を教えていただきたいと思います。

Q :アーチフォームをシステムで統一する予定はありますか
アーチフォームを統一することはありません。ただし治療のステージによってアーチフォームに関する注意点は、フルパッシブ矯正独特のものがあると考えています。付与するアーチフォームに関しても、結紮時代と比べてよりシビアに考えるべきだと思います。

Q :二級症例に使用するクラス2 エラスティックのリアクション対策として、上顎前歯部ブラケットをハイトルク、下顎前歯部ブラケットをロートルクにするという考え方もありますが、T21ではどのように解決しますか
エラスティックのリアクション自体を少なくする方向性を考えております。そうする事により、ブラケットを症例によって変える必要性もなくなり、根本的解決になると考えています。

Q :中心咬合位で咬合が安定していれば、自然とセミナーで伺った「治療の目標ゾーン」に入っていきますか?もし中心咬合位が安定していない場合はどうでしょうか
治療終盤の時点で咬合が安定していればより「目標ゾーン」に入りやすいかとは思います。咬合が安定していない場合は、安定している場合に比べると「目標ゾーン」に入りにくいとは思いますが、結紮の矯正よりは治療中の咬合が安定しやすいと思われます。結紮の矯正の場合「目標ゾーン」は極めて狭いか、ほとんど存在しない場合が多いと考えられます。


その他

Q :リンガルブラケットについて今後新製品は発売されますか
アイディアはありますが、今のところ未定です。

Q :咬合誘導のための筋機能訓練で有効な方法はあるか
そのような内容はまだ研究段階中です。どなたか研究等やっていただけるドクターがいらっしゃるようでしたらいいかと思います。

Q :パワーチェーンの着色について、パープルは着色しにくいので作ってほしい
参考にさせていただきます。

Q :8番の処理は
エラスティックなどの効果に影響がある可能性があるので、結紮時代に比べて慎重に処理する必要があると考えます。

Q :地方での講演会は今後ありますか
大阪開催は予定しております。

リテンション編

Q :リテーナーの種類は変わりましたか、田村先生は何を使用されていますか
種類に関して特に大きな変化はありません。ただし結紮の時代よりもリテーナーの使用時間を減らしても咬合は安定しているように思えます。上顎はベッグで下顎はクリップです。

Q :リテンションでの注意点は
特にはありませんが、強いていうならば悪習癖には要注意でしょうか。フルパッシブ矯正の治療中も同じですが、悪習癖の影響が結紮の矯正よりも大きいケースがまれにあります。

Q :ROは2年で終了ですか?
結紮時代から変えてはいません。約二年と設定はしていますが、実際は三年近くまで延びていることがあります。


Q&Aの最終更新日 : 2011-01-21